HOME > 脱原発と結び福島原発事故被災者支援 > 2019/09/11第17回政府交渉報告

9月11日政府交渉を踏まえた要請書

 交渉を踏まえ、下記の4件の要請書を省庁に提出しました。
  要請書@:環境省担当の復興拠点「除染作業者被ばくデータ」の公開
  要請書A:1F構内車両整備の前に所定場所で車両を徹底除染する指導
  要請書B:災害対策本部の欠席抗議と未回答質問の文書回答要請
  要請書C:環境省の統一的な基礎的情報の「公衆の被ばく限度」の書換要請

国は福島原発事故の責任を認め、被害者を生涯補償せよ
9月11日政府交渉の報告

 今回は、国の福島原発事故の責任と生涯にわたる補償をテーマとして、環境省、厚生労働省、原子力災害対策本部、原子力規制庁との交渉を設定しました。しかし、原子力災害対策本部が「出席できない」と当日に最終回答し、今回の最も重要な部分が全く交渉できないという許しがたい事態となりました。抗議し、1週間以内の文書回答を求めましたが、1か月経過しても回答がありません。
 交渉には福島からの4名を含む31名が参加し、鋭く政府を追及しました。
交渉課題とタイムテーブル
11:00-12:00環境省...帰還困難区域の除染作業被ばく
 厚生労働省...廃炉・除染の労働条件関係違反、車両整備過労死
13:00-14:00原子力災害対策本部...福島原発事故の国の責任と生涯の補償
   〃 年20mSv基準避難で放置された住民の被ばくの責任
   〃 年20mSv基準の帰還政策撤回
 原災本部、原子力規制庁...ICRPのPub.109、Pub.111改定の問題点
14:20-14:50厚生労働省...健康保険の特例措置・医療費無料化の長期継続
14:50-15:20厚生労働省、環境省...福島事故の住民被ばく
15:20-15:50環境省...統一的な基礎資料(公衆の被ばく限度)訂正を
  ...甲状腺検査に係る課題
主催者:

脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、反原子力茨城共同行動、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン
紹介議員:福島みずほ参議院議員
9.11政府交渉質問書
被ばく労働者の課題
復興再生期間終了後も医療費無料化を継続させる課題
福島原発事故で住民が1mSvを超え被ばくさせられたこと、甲状腺検査に係る医療費に関して
環境省の統一的な基礎資料の「公衆の線量限度」の書き換え要求
ICRPのPub.109,Pub.111の更新(アップデート)について
原子力災害対策本部の欠席について

被ばく労働者の課題

1.増加する帰還困難区域の除染被ばく
交渉で取り上げた「帰還困難区域の除染被ばくの増加」
・四半期ごと線量から     2018年1〜3月を境に、作業者の増加、被ばくの増加。
・地域別線量から       地域Bでは2017年に比べ、作業者、被ばく共に増加。
・2018年10〜12月に最大4.7mSv被ばくしている(地域B)・・・地域B:葛尾村、田村市、双葉町、大熊町
・年間関係工事件名数別線量  複数関係工事の労働者が増加(例えば工事件名数5以上従事者数66→137)
環境省の回答と質疑
・環境省は、帰還困難区域の除染により、従事者数と被ばくが増加していることを認めました。
・環境省は、2018年10〜12月の3か月で4.7mSvも被ばくした労働者については、「環境省の管轄に該当者はいない。環境省の管轄では被ばく線量は高くない。3か月間最高2.1mSvで、高くなると被ばくのない仕事に回っている。」と回答しました。根拠とする被ばくデータの公開を要求し、環境省は了承しました。
・今後さらに従事者数と被ばくが増加することに関しては、環境省は何ら問題視せず、線量は下がると回答しました。福島の参加者から「除染の被ばく」は当たり前と思っているのかと抗議の声が上がりました。
帰還困難区域の除染による従事者の被ばくの実態を公表させるなど、今後も問題点を追及していきます。

2.廃炉・除染関連事業者の違反率の増加
福島労働局が公表した福島第一原発廃炉作業及び除染作業関連事業所の2018年の監督・指導結果は、違反率、違反件数がここ3年で最悪となっています。フクシマ原発労働者相談センターから、「有期契約の労働者が多いが、もうフクシマには来ないという人が多い。」と現場の状況が指摘され、厚生労働省は、廃炉・除染関連の労働条件は特別に重要としながらも、抜本的な対策は示しませんでした。違反事業者の方が多いという事態は一刻も早く改善するよう求めていきます。
「フクシマ原発労働者相談センター」の秋葉さんほか福島の参加者からの発言と厚労省の回答
・割増賃金不払いとか雇用契約外とか基本的な問題がまだ出ている。働く労働者がいなくなるのでは、廃炉作業そのものに影響を与えるのではないかと非常に危惧している。違反が増えているということには今までの指導に問題があると思うがどうか。
回答:8年たっても改善されていないことはそうである。震災から8年以上たって、この間、監督指導とか説明会とかいろんな形で法令順守を呼びかける、指導してきているが、法令違反が認められるという点は我々として真摯に受け止め、引き続きしっかり取り組んでまいらないといけないと考えている。
・有期契約の人が多い。役に立ちたいと思ってきたが、もうフクシマには来ないという人が多い。賃金は東京オリンピックと変わらない。被ばくするだけ不利だといっている。廃炉作業業者のアンケート調査では7割ぐらいが人手不足と答えている。対策をきちんと立てないといけない。
・違反の方が多い、違反のオンパレードだ。「福島第一原発に限ったことではない」は撤回するのか。
これからどういうことをするのか。
・東電交渉で何次の下請けまでいるのかと聞いたがわからない。下位の下請けの労働者は大変だ。
回答:東電は使用者であるが一定指導する。

3.福島原発構内車両整備士の過労死
厚生労働省は、「個別事案については情報公開法の関係もあり、詳細についてはコメントを差し控える。」と、具体的回答を拒否しました。
事前質問に対する回答
@事前に把握していたかどうかは回答できない。
A長時間労働の労災申請があったときは厳しく指導している。違法な長時間労働が認められた場合、監督指導・是正を徹底している。長時間労働の実態があるとかの情報があった場合指導している。
B労働者が倒れた場合について、平成27年8月26日に「東京電力福島第一原子力発電所における安全衛生管理対策のためのガイドライン」を定めている。適切に実施されるよう東電を指導している。
C緊急医療室が設置されている。
「フクシマ原発労働者相談センター」の秋葉さんの発言と厚労省の回答
・現場では緊急医療室に連絡ができなかった。直接運んだが、運び方とか「除染」とかいろいろ問題があってスムーズにいかなかった。現場に即したガイドラインの改定を求める。
回答:検討したい。
・搬送が遅れたということは認めるのか。
回答:個別事案は答えられない。
・労災申請されればというが、企業から労災申請しないでくれと指導されている。
回答:疑いがあるものは事業所に問い合わせている。
・福島第一原発で死亡した事案はいくつあるのか。労災認定は2名で、多くは「私病」と扱われている。
主催者:福島原発構内の車両整備は放射線業務で通常の整備に比べ過酷な環境である。除染等現場の指導が必要。
回答:現場の指導をする。
東電の指導に「車両整備の前に所定の場所で車両を徹底除染すること」を含めよとの要請書を提出します。

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復興再生期間終了後も医療費無料化を継続させる課題

(1)来年以降の国民健康保険の特例措置による医療費無料化
 来年に関しては、引き続き実施が決まっており、2021年についても実施の見込みとのことでした。
(2)復興再生期間終了後の無料化継続
 福島の参加者から「双葉郡の町村会等々でも、医療費無料化を継続してくれという要請は再三再四にわたりやっている。」との指摘がありました。
 これに対して、厚生労働省は、「現地の方々の要望、被災自治体からの要望もふまえ、復興庁としっかり連携を取りながら、どういったことが可能なのかとか、現地の財政の状況も確認しながらどんどん検討を進めていきたい。」と答えました。
 福島と連帯して復興再生期間終了後も国民健康保険の特例措置による医療費無料化を継続させる広範な取り組みを進めましょう。

参考資料:東日本大震災被災者の健康保険特例措置による医療費無料化
東日本大震災の被災者の保険料、医療費窓口負担、介護利用料などの免除は、震災後、当初は所得の条件をつけず、国が全額負担する形で始まった。
法的根拠
国民健康保険法第44条、第77条
第四十四条 市町村及び組合は、特別の理由がある被保険者で、保険医療機関等に第四十二条又は前条の規定による一部負担金を支払うことが困難であると認められるものに対し、次の各号の措置を採ることができる。
一 一部負担金を減額すること。
二 一部負担金の支払を免除すること。
三 保険医療機関等に対する支払に代えて、一部負担金を直接に徴収することとし、その徴収を猶予すること。
第七十七条 市町村及び組合は、条例又は規約の定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができる。
経過
福島原発事故の帰還困難区域等 帰還困難区域等(帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域)では、事故後の転出者を含め、国の全額補助により、健康保険料と一部負担金の免除が平成31年2月28日まで継続されている。
令和2年3月からについても継続の予定。
変更点:平成26年10月1日以降は、上位所得層の被保険者等が対象外となっている。
福島(福島原発事故の帰還困難区域等を除く)、宮城、岩手
2012年9月で国の全額負担の制度は廃止された。
2012年10月から、医療費が3%以上増加した市町村に対して、負担増加分の80%を国の交付金で支援してきた。
2014年4月から増加率に応じて最大95%まで引き上げる拡充策がとられている。
福島県(帰還困難区域等を除く)
2割分が自治体の負担となることを理由に、免除措置を打ち切る自治体が続出。
(1)国保の保険料の猶予・免除等
南相馬市、須賀川市など5市町村が2013年3月末で取りやめ。
福島市など36市町村が2012年9月末で取りやめ。
(2)国保の一部負担金の免除
福島市、郡山市、いわき市など26市町村が2012年9月末で取りやめ。
南相馬市、相馬市、須賀川市など16市町村が2013年3月末で取りやめ。
岩手県
所得制限をつけない形で、国保医療費の免除などを続けている。
宮城県
2割を県が担ったが、財政負担が重いとして2012年度末で免除を打ち切った。
被災者から猛反発を受け、2014年度からは所得を制限して対象者を絞り、全県(35市町村)で再開された。
2015年度末で仙台市など26市町村が、2017年度末で石巻市など6市町が終了。最後まで継続していた名取市、気仙沼市、東松島市も2019年2月末で終了した。

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福島原発事故で住民が1mSvを超え被ばくさせられたこと、甲状腺検査に係る医療費に関して

環境省からはこれまでの担当者に代わり新しい担当者が出席しました。
(1)福島原発事故で住民が1mSvを超え被ばくさせられたことについて
 私たちは、「福島原発事故で多数の住民が住民が1mSvを超え被ばくさせられたことは明らか事実である。」、「国連科学委員会(UNSCEAR)をベースにした評価によらず、『国策の被害者』を生み出した国の責任で独自の(周辺県も含む)政策を行え。原爆被爆者の場合は5キロ以内の被爆者に健康手帳が交付され、3.5以内の被爆(1mSv以上被ばく)でがん・白血病が積極認定されているではないか。」と主張しました。
 環境省は、現行の県民健康調査の枠組みの説明を繰り返すばかりで、聞く耳を持たない姿勢でした。補助役として参加した原子力規制庁の担当者は、福島原発の敷地境界で現在線量がどうなっているかを説明するという全くピンボケの対応でした。

(2)サポート事業として実施されている「甲状腺検査に係る医療費無料化」に関して
 私たちは、「事故がなければ手術を受けることなどなかった。生涯にわたる医療費無料化は権利である。医療情報提供を無料化の条件にするのは人権無視である。」と主張しました。
 環境省は、「サポート事業は医療費の減免の為に設けられたものではないので、そもそも人権という話をされるのであればこの事業は該当しない。人権であるとかそういった事に関してこちらは答える事は出来ない。」と、議論に応じませんでした。

 こうした被害者の立場に立たない環境省の応対に対して、福島の参加者から、「今回の原子力事故による被災者の皆さんは、いわば国策による被害者です。復興までの道のりが仮に長いものであったとしても、最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応してまいります。」という、あなたたちが発表したこの方針で、被害者の立場に立ってやってもらいたい。」との力強い発言があり、参加者から大きな拍手が起こりました。

参考資料
2011年5月17日に原子力災害対策本部が発表した「原子力被災者への対応に関する当面の取り組み方針」
原子力政策は、資源の乏しい我が国が国策として進めてきたものであり、今回の原子力事故による被災者の皆さんは、いわば国策による被害者です。復興までの道のりが仮に長いものであったとしても、最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応してまいります。

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環境省の統一的な基礎資料の「公衆の線量限度」の書き換え要求

前回6月12日の交渉で確認されたように、放射線審議会の答申で「公衆の被ばく限度を年1mSvとし、これを規制体系の中で担保するべきである」とされ、それに沿って「線量告示」が作成されています。
しかし、環境省の「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」の公衆の線量限度に関する部分には次のように書かれています。
線量限度の規定はない(事業所境界の線量限度、排気排水の基準は1mSv/年を基に設定している)
これでは日本の法令は公衆の被ばく限度と無関係に作られていることになり、事実に反しています。今回の交渉で下記のように書き換えることを求めました。
公衆の被ばく限度を1mSv/年とし、規制体系の中で担保している(事業所境界の線量限度、排気排水の基準は1mSv/ 年を基に設定している)
交渉には環境省と並んで原子力規制庁が出席しました。原子力規制庁は「公衆の被ばくに関する線量限度というものは、規定していないと認識している。原子力施設敷地周辺の線量限度等定める告示を定め原子力施設周辺の放射線の影響を極力下げるようにするための基準として、設けている。」、「原子力施設を設置している業者を規制しているもので、その敷地周辺の線量限度を年間1mSvと定めている。」と説明しました。
この説明には、わずか3ケ月前の前回の交渉で「線量告示は1998年6月の放射線審議会意見具申をふまえて作成されている。」、「線量告示は公衆の線量限度を担保するために定められている」と原子力規制庁が認めたことが全く無視されています。
今回の原子力規制庁の説明は「書き換えの必要なし」の結論ありきの説明に過ぎません。
環境省は我々の「書き換え案」に対して見解は表明せず、持ち帰るとのみ回答しました。しかし、その後何も連絡がありません。
環境省の統一的な基礎資料の「公衆の線量限度」の部分の書き換えを求める要請書を提出しました。

注)要請書の検討中に、厚生労働省の「医療放射線の施設設備の構造基準について」に、
病院内の居住する区域及び敷地の境界における線量限度は、一般公衆が存在する区域を防護し、一般公衆の線量限度を担保するために規定されている。
と記載されていることが分かりました。要請書にこれも根拠の1つとして示します。
詳しくは「環境書、原子力規制庁への要請書」をご覧ください。

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ICRPのPub.109,Pub.111の更新(アップデート)について

 国際放射線防護委員会(ICRP)が福島事故の教訓をもとにPub.109とPub.111を更新するためのパブリックコメントを受け付けています。
 パブコメに向けた草案(「大規模原子力事故における人々と環境の放射線防護」)で、「緊急時被ばく状況」及び「現存被ばく状況」の「参考レベル」が夫々100mSv以下、10mSv以下とされていること、長期的に1mSv程度とされていること、放射線業務作業者以外の土木作業者、バス運転手、ボランティアなどを「レスポンダー」として被ばく作業に動員すること、に関する事前質問に対しては、「パブリックコメントの段階なので政府として具体的な検討は行っておらず、回答すべきことはない。」との回答でした。
 また、「発見されている小児甲状腺がんは福島原発事故による被ばくの影響とは考えにくい。」と書かれていることについては、「甲状腺検査は原子力規制庁の所掌ではなく、回答できない。」との回答でした。「福島県はまだ検査を終えていない。その状況で勧告の根拠として引用するのはどうか。規制庁はストップをかけるべきではないか。」との追及に対しては無言の対応でした。
 会場からの、「草案を作成したICRPのタスクグループの副座長を努めている本間委員は原子力規制庁の職員である。これについて説明を求める。」との質問に対して、出張扱いであるとの回答がありました。勧告を受け入れる立場の組織の職員が勧告を出す立場の組織のポストについていることには問題があるとの指摘が続きました。

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原子力災害対策本部の欠席について

環境省大臣官房総務課国会連絡室から担当者が説明と謝罪のために13時から出席。
○本日、原子力災害対策本部のほうから要望に対してお答えする人間を出す予定だったのですけれど、日程調整があわずに、対応者を出すことができませんでした。その点についてまずお詫びさせていただきます。申し訳ございません。環境省としましても原子力災害対策本部のチームの一部として、今回出席する立場にあったと思っていて、そういう意味で今回調整がつかなくて出席できなかったのは大変申し訳ないと思っています。大変申し訳ありませんでした。
説明の際に出た要請・質問に対する説明
○環境省の総務課が全体を調整する立場にあり、内閣府の原子力防災が議員だったりこういった要望の対応・調整する機能を与えられておりますので、そういった立場でこういった要望に対応する調整を環境省総務課がしておりました。
○係長とかも調整したが全員ダメだった。
○「当面の方針」については環境省は(私は)答える立場になく、本日出席する予定であった原子力災害対策本部のものから説明する必要のあることです。
○疑義があればご質問いただいて、それをこういうご意見がありましたというかたちでお伝えさせていただくことは最低限させていただくんですけども、それ以上のことは対応できないので、申し訳ありません。
○どういう形で回答させていただくかはまた改めて調整させていただければと思います。いずれにしても本件について回答はする必要はあると思っています。今文書回答させていただくと明言はできないですけど。
○(メモを作り代理者が説明すべきとの意見に対して)回答は担当者が決まってから作成するので、今回はできなかった。

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脱原発と結び被災者支援


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